いらっしゃいませ
一日に何百回しゃべるのだろう?
私は歓迎するその挨拶が一番大切な仕事だと思う
レジ以外の従業員はそんな挨拶もできないスーパーが多い
レジ(チェッカー)の仕事は多々やってきた
そして今は夜間店長をやって5ヶ月目に入った
1年半、仕事を探し続け何度も落とされてきた
自分には自信があった
面接では誰にも負けないと自負していたし
今まで不採用はなかった
真面目、ヤル気、気合い、忠誠、正直…は私の勲賞だった
しかし歳月が過ぎ私も歳をとった
見た目で若者には勝てない
連戦連敗の屈辱を味わう
そして今の夜間店長職の面接を去年10月に受け
即日採用された
浪人侍の私はやっと自分を認めてくれる会社・店長・主君に出逢った
今まで私を見捨ててきたライバル会社には絶対負けまいと思った
この恩義に報いたいと思った
どんな仕事だとしても
人や社会のためになる仕事なら誇りに思ってやるべきだ
互いに助け合って生きるのが人間だから
日本人は商売を卑下している人が多いと思う
私が金を払うんだからと傲慢な態度の客が多い
挨拶してもにらんでくる
それでも数十人に一人は同じ人間として接してくれるありがたいお客様もいる
挨拶すればこんばんわと返してくれる
ありがとうと言ってくれる
気軽に話しかけてくれる
そんな人間としての交流が楽しい
体力が衰え
気力も失せているが
それでも67歳のじーちゃんだって交代で頑張っている
あと何日、何年生きられるかわからないが
死ぬまでこの仕事を続ける覚悟だ
夢を追い自由を謳歌する私には最低限の社会的義務だと思う
今の私には夢も自由もないが
それでも今まで生きてこれた
感謝の気持ちを忘れなければ幸せは手にできる
職もなく金もなく帰る家もない絶望人に比べれば
しばらく流浪の民だった私には今、帰る家はあるのだから…
大好きな宮沢賢治と太宰治の本をまた読んで独り涙にくれる
そして生きる力を得る
誰も私の孤独の苦しみを理解することはできないが
私は賢治や太宰を理解したいと思う
共に人生を戦ってきた同志なのだから…
私は死ぬまで自分の負けを認めはしない
ギブアップはしない
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